ごあいさつ
私は約20年間、食品業界にて研究・製造・営業部門などに従事し、「しゃべれる技術者」として社内外の折衝業務を担当することの多い生活を送って参りました。
社会人9年目で工業界の生産性向上&人財教育コンサルタントに転身し、企業経営と改善活動に対するコンサルタントの在り方など、多くのことを学びました。その後、その経験を以て食品企業に戻り、商品開発だけでなく、委託先工場の管理と共に、「お客様相談室長」を経験しました。初めてのジャンルでしたので右往左往しましたが、振り返ってみれば非常に稀な経験を積むことができました。
もともと、あがり症で人前でしゃべるのは得意ではありませんが、「製造部と営業部」「製造部と顧客企業」「自社とお客様」などの異なる文化間で、専門用語を用いずに平易な言葉に訳して伝えることを得意としておりましたので、顧客対応やコンサルタント業では一定の評価を頂くことができました。
そして2014年、これらの経験を活かして独立し、食品企業の危機管理コンサルタントとして「モーションマインド」を設立しました。
屋号として使っている『 モーションマインド 』という言葉は、日々の改善業務を行う中で目の前の不具合や問題に目を伏せることができない想い、『 改善せずには いられない気持ち 』という意味です。
「まずやる、すぐやる、とりあえずやる」をモットーに、日常に潜む問題や成すべき課題に共に取り組み、これらを解決、排斥、改善するお手伝いをさせて頂いております。
食品企業の危機管理としては、「顧客対応」や「食品安全」「食品防御」などが挙げられます。これらは独立しておらず、それぞれが連動する密接な関係にあります。これらを社内に浸透させ、有益に機能させる方法として大企業を中心に「ISOなどの国際規格」が用いられていますが、ご承知の通り、スキーム(枠組み)やマニュアル(手順書)などを設定しただけでは、必ずしも成果に繋がるとは限りません。片手落ちの状態に過ぎないからです。
当然、HACCP制度化の流れでも同様です。現場のハザード分析を繰り返し、HACCP計画書を何度も改訂しながら従業員に周知・教育し、効果の検証が得られて初めて、食品安全を脅かす事故の発生確率が低くなっていくのです。
枠組みから考える方法は「トップダウン」や「演繹法」に近く、欧米などではよく見られる傾向のようです。ところが、戦後の日本の急速な回復を支えたのは「ボトムアップ」や「帰納法」ではないでしょうか。枠やルールに当てはめていく「演繹法」と、発生している事象から理論を組み上げていく「帰納法」は二分することができません。トップダウン的に導入された枠組みの歪みを科学的に検出、検証するのが、国際規格でいうマネージメントレビューや、社内監査ではないかと思います。
・本当に、決めた通りにやっているのか?
・今のルールによって、却って不具合が生じていないか?
・もっと他に都合の良い方法はないか?
日本人は、こうした作業を小集団で全体的に取り組むことは得意でしたが、「科学的に」「理論立てて」と(訳された)言葉通りに考えてしまうと、急に苦手意識を持ってしまうようです。
現在は、日本国内でHACCP制度化、対米的にはFSMA施行開始(ISO22000改訂やFSSC Ver4でも、FSMAの考え方が強まります)という、まさに食品業界における大きな過渡期にあります。しかし、企業の大小に関わらず、企業経営の基本となる原理原則は変わらないはずです。急速に進む西洋風の各種国際規格や考え方を日本風にモディファイし、自己流の強固なものにするためには、日本流に『 現実の現象 』を取り扱い、小さくPDCAを何度も回転させて高めていくことが重要なのではないでしょうか。
私は「コンサルはツール」だと考えています。
自分の経験したことがないことや知らないことを教えてくれる家庭教師的な一面だけでなく、皆、知識も経験もあるが他の要素が障害となっている場合こそ、コンサルというツールで風穴を開けるべきです。米国から発信され、世界中に拡散しているFSMA(食品安全近代化法)でいうリスクベースの考え方は、まさに食品企業の危機管理能力向上にフォーカスが当てられているのです。
大したことはできませんが、危機管理能力の高い企業体質を手に入れることで、これから始まる真のグローバルな市場の中に生き残ることができる企業へと、その成長の一歩を支援させて頂ければと考えております。